2026.04.09

捨てた服は、どこへいくのか——colourloopが「色」で描く循環型社会の可能性

東京建物とリバネスが推進する「Regenerative City Tokyo」の実証プロジェクトの一環として、大丸東京店9階の複合型体験ストア「明日見世(あすみせ)」では、2026年2月4日から4月28日までの約3カ月間、「彩(いろどり)から再生を伝える」というテーマのもと、捨てられた素材に技術とデザインで新たな命を吹き込み、色を起点に商品を展開する3社のプロダクトが展示されている。

 

株式会社colourloopは、これまでリサイクルが困難とされてきた混紡素材の廃棄繊維を、「色」という独自の視点で鮮やかな資源へと変えている。循環型社会の実現に向けた取り組みと思いについて、同社代表の内丸もと子氏に話を聞いた。

「色」で分ける、新しいリサイクルのかたち

都市から排出される廃棄繊維の現状は、私たちが想像する以上に複雑だ。現在、流通している服の約65%は2種類以上の素材が混ざっており、3種類以上の混紡素材も約47%と半分近くを占めている。このように素材が混在していることが、単一素材での循環を前提とする従来のリサイクルを難しくしてきた。

資料提供:株式会社colourloop

テキスタイルデザイナーやカラーコーディネーターとして活動していたcolourloop代表の内丸もと子氏は、世の中にあまりにも多くの廃棄がある状況を目の当たりにし、「ただ作っていくだけではいけない」という思いから、京都でテキスタイルデザイナーとして勤務したのち、2011年から京都工芸繊維大学の博士課程で繊維リサイクルの研究を始めた。

「研究を始めた当時、ゴミの山にはさまざまな色や素材の廃棄衣料が混在していました。工学中心のリサイクルの考え方では素材を分けることが重視されるため、廃棄繊維の再資源化が進んでいませんでしたが、私はデザイナーとして、これを『色』で分けて活用することで、消費者にとっても魅力的な素材に生まれ変わらせることができるのではないかと考えたのです」(内丸氏)

資料提供:株式会社colourloop

内丸氏は、廃棄物を色ごとに分類し、「イヤな色にならない法則」を数値化することに成功。脱色という環境負荷の大きい工程を行わず、繊維そのものを色材として活用できるように構築したのが、同社の「カラーリサイクルシステム」だ。

 

この研究では、マンセル色相環の基本色の繊維を使用し、あらゆる組み合わせ・混色比で、わた状、粒状、糸状といった形状別の試料を作製、その試料それぞれに対する人の好感度を、官能検査で算出・数値化する。その結果、好感度の高い組み合わせと低い組み合わせが明らかになり、形状ごとの好感度の高低の閾値を数値化することができる。

 

この成果を社会実装するために内丸氏は、研究開始から8年後の2019年にcolourloopを設立した。

廃棄衣料から生まれた再生糸「Reprit®︎」

今回の「明日見世」で出品されているのは、Tシャツと、京都の老舗・川徳商事とのコラボ商品である足袋ソックスで、いずれも同社の再生糸「Reprit®︎」を使用している。この再生糸は、廃棄衣料を一度わた状に戻してから再び糸に紡いだもので、同社が最も大切にしている素材だという。

「Reprit®︎は、繊維から繊維への『水平リサイクル』を実現するものです。自分たちが着た服がもう一度糸になり、それを循環させていくフローができることで、循環型社会の可能性が見えてきます。着古した服が破れたり毛玉があったりしても、もう一度糸として再生できるということを、一般消費者の方に知っていただきたいのです」(同)

 

Tシャツや足袋ソックスに使われる「Reprit®︎」は廃棄繊維が30%を占め、生成りの綿と合わせることで、どこか柔らかいはんなりとした色合いが生まれている。染料を足さずに元の服が持っていた色を活かすことで、パステルカラーをベースとした独自の風合いが魅力だ。

また、colourloopでは素材ごとにチームを組み、1%単位で素材構成を数値化してタグに記載している。今回の出展品は基本的に綿リッチな仕上がりだが、色ごとにナイロンが少量含まれているなど、その構成はさまざま。「リサイクルだからこそのミックス感」を楽しむことができるという。

色ごとに異なる素材構成(画像提供:株式会社colourloop)
再生繊維をみんなでつくってみんなで使える社会へ

欧州連合(EU)ではすでに、再生繊維を使わない製品を市場から排除する方針も出している。日本でも対応が急がれるが、そこで同社が尽力するのが水平リサイクルでもある。内丸氏は「明日見世」への出展について、「捨てるしかなかった服が新たな衣類として循環していける具体的な仕組みを、多くの人に知ってもらえる場」として期待しているという。

 

「不要になった服を古着屋さんに引き取ってもらっても、実際にはそのままゴミの山へ行ってしまう場合も多いのが現状です。今回の出展を通じて、リサイクルが回っていく具体的なプロセスを、より多くの方に知っていただきたい。そして企業様においても、新たなものづくりをする際に、たとえば10%でもこの再生糸に置き換えてもらうことができれば、社会は大きく変わるはずです」(同)

現在はBtoBの展開も広がっており、企業の廃棄ユニフォームをグッズへと再生する取り組みや、大阪・関西万博でのベンチ素材への採用など、廃棄繊維をマテリアルとして活用する事例も増えている。

 

「環境的価値だけでなく、『素敵だから欲しい』と思ってもらえるものづくりこそが、サーキュラーエコノミーにつながる価値創造だと信じています。今後はBtoCからBtoBへとつなげていき、再生繊維をみんなでつくってみんなで使えるような社会にしていきたい。そんなリサイクルの理想形から循環型社会を実現し、次の世代へと思いをつなぐことが私たちの願いです」(同)

廃棄された服が「色」という記憶を纏ったまま糸に戻り、また誰かの日常へと還っていく——colourloopが紡ぐその循環は、再生とは失われたものを取り戻すことではなく、価値の見方を変えることから始まるのだという、静かな問いを投げかけている。

 

 

(文/須賀原みち 写真/尾藤能暢)